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最高裁判所第三小法廷 昭和34年(オ)618号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人堤千秋の上告理由について。

根抵当権者の有する被担保債権が確定債権となつた場合には、その根抵当権は普通の抵当権と同一に帰するので、弁済を為すにつき正当の利益を有する者がその債務の全額を弁済したときは、右弁済者は法定代位により右債権及び抵当権を取得するものと解するのを相当とするところ、原判決によれば、原審は、訴外福岡煉炭株式会社は、上告人が連帯保証人となり、安田信託銀行株式会社(旧商号中央信託銀行株式会社)より昭和二四年一二月二〇日金四一万円を借用し、右債務の担保として本件物件につき福岡法務局昭和二五年二月一八日受付第一四三二号をもつて、債権者中央信託銀行株式会社、債務者福岡煉炭株式会社、債権元本極度額金四五万円、利息日歩二銭九厘以内、遅延損害金日歩一〇銭なる根抵当権設定登記手続を為したが、上告人は、右銀行に対し連帯保証人たる責任上昭和二八年一二月一六日元利合計金五五万九七一八円を完済したので、前記債権及び根抵当権は法定代位により上告人に移転した旨認定しているが、判文の全趣旨に徴すれば、右元利金合計五五万九七一八円の完済とは上告人が前記銀行に対し、確定債権となつた元金四一万円利息一四万九七一八円の右債権額を代位弁済した趣旨であり、また上告人に移転したとする根抵当権とは普通の抵当権となつた根抵当権の意であると解することができるので、上告人の右代位弁済により右債権及び抵当権が債権者たる右銀行から上告人に移転した旨の原審の判断は、これを肯認するに足る。従つて原判決には根抵当権に関する法理を誤つた違法はなく、また、甲第三、第四号証に対する原審の判断もその挙示する証拠関係、事実関係からこれを肯認し得る。

所論は、結局、独自の見解に立脚して原判決を非難するか、または原審の適法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するに帰し、採るを得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐)

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